薬機法とは?広告の規制内容と7つの違反事例、罰則・対策まで徹底解説

「自社の広告が、知らないうちに薬機法違反になっていないだろうか?」
「この表現は使っても大丈夫なのか、具体的なNG事例が知りたい」

企業のマーケティング担当者や広告運用に携わる方なら、一度はこのような不安を感じたことがあるでしょう。

薬機法(旧・薬事法)は、医薬品や化粧品、健康食品などの広告表現を規制する法律です。薬機法の広告規制は年々厳格化しており、対象は広告主だけでなく代理店や制作会社、さらには個人のインフルエンサーにまで及びます。

本記事では、薬機法における広告規制の基本から、実際の違反事例、違反した場合の罰則、そして実務で取るべき対策まで体系的に解説します。

薬機法違反のリスクを正しく理解し、安心して広告運用を行うための知識を身につけましょう。

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薬機法による広告規制とは?

薬機法は、医薬品や医療機器、化粧品などに関する広告表現を規制する法律です。違反の多くは悪意ではなく、広告の定義や対象範囲の誤解から起こります。

本章では、薬機法ではどのようなものが広告と見なされ、誰が規制の対象となり、主にどのような表現が禁止されているのか整理します。

薬機法で規制対象になる広告の定義

薬機法における広告は、一般に「広告の3要件」と呼ばれる条件で判断されます

要件解説具体例
1. 顧客を誘引する意図がある顧客の購入意欲を掻き立てる意図が明確であること。「今なら初回半額!」「驚きの効果をあなたも体験!」
2. 特定の商品名が明示されている特定の医薬品、化粧品などの商品名が明らかにされていること。商品パッケージの画像、商品名の記載
3. 一般人が認知できる状態にある不特定多数の人がその内容を見聞きできる状態であること。Webサイト、新聞、雑誌、SNSへの投稿

上記の要件を満たす場合は広告とみなされ、表示や表現が薬機法の広告規制の対象となります。

テレビCMやWeb広告はもちろん、SNSの投稿やパンフレット、個人のブログ記事なども対象に含まれる可能性もあるため、注意しましょう。

薬機法の規制対象者

薬機法の広告規制は、製薬会社や化粧品メーカーだけに適用されるわけではありません。薬機法の条文では「何人も」と規定されており、広告に関わるすべての人が対象となります。

そのため、広告主から依頼を受けて制作・配信する事業者や個人も、その内容に責任を負うことを意味します。

対象者の例具体的な役割
製造販売業者、販売業者商品を市場に提供する主体(広告主)
広告代理店、広告制作会社広告の企画、制作、運用を請け負う事業者
テレビ、新聞、雑誌、Webメディア広告を掲載・配信する媒体社
アフィリエイター、インフルエンサー個人のブログやSNSで商品を紹介し、成果報酬を得る個人

立場に関わらず、広告に関与するすべての人が薬機法を遵守する義務を負っています。

広告で禁止される3つの主要表現

薬機法の広告規制には様々なルールがありますが、特に重要なのが以下の3つの禁止事項です。多くの違反事例は、これらのいずれかに抵触しています。

禁止事項該当する条文内容
虚偽・誇大広告の禁止薬機法第66条医薬品等の名称、効果、性能について、事実と異なる、または事実以上に優良であると誤認させる広告を禁止します。医師が保証したかのような表現も含まれます。
特定疾病用医薬品の広告制限薬機法第67条がんや白血病など、医師の指導がなければ重大な健康被害を生むおそれがある医薬品について、一般向けの広告を禁止します。
未承認医薬品等の広告禁止薬機法第68条日本国内で医薬品や医療機器として承認・認証を受けていない製品について、その名称や効果、性能に関する広告を禁止します。

これらのルールは、消費者が誤った情報によって健康を害することを防ぎ、適切な製品選択をできるようにするために設けられています。

【参考】薬事法における広告規制|厚生労働省

広告の薬機法違反事例7選

本章では、どのような広告表現が薬機法違反と判断されるのかを、7つの事例で具体的に解説します。各事例で「どこが違反ポイントか」「なぜ問題なのか」を整理し、自身の業務と照らし合わせてください。

事例1:健康食品で医薬品的効能を標榜

健康食品はあくまで「食品」であり、病気の治療や予防といった医薬品的な効果を謳うことはできません

項目内容
対象商品健康食品「肝パワーEプラス」
違反内容「ズタボロだった肝臓が半年で復活」「肝臓疾患の予防に効果がある」など、疾病の改善・予防効果を断定的に表示し、事実と異なる体験談を広告に掲載
なぜ違反か健康食品は医薬品ではないため、特定の身体機能の改善や疾病の治療・予防効果を標榜すると薬機法第68条(未承認医薬品等の広告禁止)および第66条(虚偽・誇大広告の禁止)に該当する可能性がある
結果広告主だけでなく、広告代理店や制作会社の関係者を含む計6名が薬機法違反で逮捕

健康食品の広告については、以下の記事もご覧ください。

健康食品におすすめの広告は?広告媒体の種類と表現に関する規制を解説

事例2:化粧品で効能逸脱の広告

化粧品の広告で表現できる効能効果は、薬機法によって56項目に厳密に定められています。この範囲を超えた表現は、虚偽・誇大広告と見なされます。

項目内容
対象商品特定の医薬部外品化粧品
違反内容ニュースアプリ大手「Gunosy」の子会社が、「シミが消える」という表現や架空の口コミを用いた広告を制作・配信
なぜ違反か化粧品として認められている効能は「(日やけによる)しみ、そばかすを防ぐ」まで。すでに生じたシミが「消える」と表示することは承認範囲を逸脱し、医薬品的効能を暗示する虚偽・誇大広告(薬機法第66条)に該当する可能性がある
結果東京都が調査を開始し、企業側も不適切な広告制作を認めて再発防止策を実施

化粧品広告に関しては、以下の記事もご覧ください。

化粧品広告完全ガイド!動画トレンド、Web広告クリエイティブや薬機法など解説

事例3:未承認医薬品の広告

海外では医薬品として販売されていても、日本国内で承認されていなければ、その効果を広告することはできません

項目内容
対象商品未承認医薬品「スーパープラセンタ」
違反内容美容クリニックに対し、国内で医薬品として承認されていない同製品を販売し、「免疫力が上がる」などの効能を広告
なぜ違反か日本国内で有効性や安全性の審査を経ていない未承認医薬品について、その効果や性能を広告する行為は、薬機法第68条(未承認医薬品等の広告禁止)で明確に禁止されている
結果薬機法違反(未承認医薬品の広告禁止)の疑いで、関係者が逮捕・書類送検された

事例4:未承認医療機器の虚偽・誇大広告

医療機器も医薬品と同様に、国の承認・認証が必要です。特に、人体への影響が大きい機器については厳しく規制されています。

項目内容
対象商品未承認医療機器「サーマクール」
違反内容国から承認を受けていない美容医療機器を無許可で販売し、さらに不正に改造して使用。効能効果を訴求していた点も問題となった
なぜ違反か未承認の医療機器を販売・広告することは、薬機法第68条(未承認医療機器等の広告禁止)に該当。また、無許可での販売や製造(改造)行為も、薬機法上の許可制度に違反し、別途罰則の対象となる
結果薬機法違反の疑いで告発された。

事例5:新型ウイルス関連の不当表示

社会的な不安が高まっている事柄に関連する広告は、規制当局による監視が特に厳しくなる傾向があります。

項目内容
対象商品サプリメント、漢方薬、健康器具など
違反内容新型コロナウイルスの流行期に、「新型コロナウイルス対策」「抗ウイルス効果がある」などと標榜し、商品を広告・販売した。
なぜ違反かサプリメントや健康器具は医薬品ではないため、特定のウイルス感染症の予防や治療効果の表示は不可。これらの表現は、薬機法第68条(未承認医薬品等の広告禁止)や第66条(虚偽・誇大広告の禁止)に該当する可能性がある。
結果書類送検や行政指導、逮捕などの処分が行われた。売上が少額の個人アフィリエイターも摘発対象となり、社会不安に便乗した広告への厳しい監視姿勢が示された。

事例6:SNS・アフィリエイトのステルスマーケティング

インフルエンサーやアフィリエイターによるSNS投稿も、薬機法の規制対象です。

広告であることを隠して商品を紹介する「ステルスマーケティング」は、景品表示法だけでなく薬機法違反にも問われる可能性があります。

違反となりうる表現例(SNS)なぜ問題か
「このサプリを飲んだら長年の悩みが解決した!」(個人の感想を装う)個人の体験談であっても、医薬品的な効果を暗示すれば薬機法違反となる可能性がある
「#PR」の表示をせず、あたかも自発的な投稿のように見せる広告であることを隠す行為は、消費者の公正な選択を妨げるとして問題視される

体験談の形式をとっていても、内容が医薬品的な効果を示唆していれば規制の対象となります。

事例7:個人間取引プラットフォーム上の違反広告

フリマアプリなど個人間で取引を行うプラットフォーム上での出品も、薬機法の例外ではありません

項目内容
対象商品未承認医薬品「クマの胆」
違反内容フリマアプリ「メルカリ」において、「肝機能改善や胃のむかつきに効果がある」などの効能を記載して出品
なぜ違反か「クマの胆」は医薬品成分を含みますが、出品された製品は国の承認を受けていない。未承認医薬品に具体的な効果を表示して出品する行為は、未承認医薬品の広告・販売に該当し、薬機法第68条に違反する可能性がある
結果厚生労働省の要請を受け、プラットフォーム事業者が当該出品を削除。個人による出品であっても、薬機法の規制が及ぶことを示した事例

薬機法に違反した場合の3つのペナルティ

本章では薬機法違反による主な3つのペナルティについて解説します。それぞれどのような内容なのか、具体的に見ていきましょう。

行政処分

薬機法違反が確認された場合、まず科されるのが厚生労働省や都道府県などからの行政処分です。行政処分は、違反行為の是正と再発防止を目的とする措置であり、違反の程度や悪質性に応じて段階的に行われます。

処分の種類内容
措置命令違反広告の中止、商品の廃棄・回収、再発防止策の実施などを命じられる
業務改善命令広告審査体制の見直しなど、事業運営の改善を命じられる
業務停止命令一定期間、事業の一部または全部の停止を命じられる
許可の取消し医薬品製造販売業などの許可が取り消され、事業の継続が不可能になる

行政処分は、企業活動そのものに直結するリスクです。単なる広告修正で済む問題ではなく、事業継続に影響を及ぼす可能性がある点を理解しておく必要があります。

課徴金納付命令

2021年8月の法改正で、虚偽・誇大広告(第66条違反)に対するペナルティとして課徴金制度が導入されました。これは、行政処分や刑事罰とは別に科される金銭的な制裁です。

課徴金制度では、違反行為期間中における、対象商品の売上額の4.5%の支払いが必要となります。対象期間は最長で3年間であり、売り上げが大きいほどダメージは大きくなります。

例えば、年間10億円を売り上げる商品で2年間違反広告を続けていた場合、単純計算で9,000万円(20億円 × 4.5%)もの課徴金が課される可能性があります。

これは利益ではなく売上にかかるため、企業経営に極めて大きな打撃を与えます。

刑事罰

違反が悪質であると判断された場合、警察による捜査が入り、刑事事件として立件されることがあります。その場合、裁判を経て懲役刑や罰金刑が科されます。

違反内容刑事罰の内容
虚偽・誇大広告(第66条違反)2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、またはその両方
未承認医薬品の広告(第68条違反)2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、またはその両方

さらに、違反行為を行った従業員個人だけでなく、その法人(会社)に対しても罰金が科される両罰規定が設けられています。薬機法違反は表現ミスではなく、「法令違反である」という認識が重要です。

薬機法違反を防ぐための対策5つ

薬機法違反は、特別な企業だけに起こる問題ではありません。多くは、広告制作の初期段階での確認不足や認識のズレから生じます。

本章では、日常業務の中で実践できる具体的な薬機法違反の対策を5つ解説します。

1. 厚生労働省のガイドラインを定期的にチェックする

薬機法の解釈や運用基準は、厚生労働省が発行するガイドラインで具体的に示されています

ガイドラインは法律そのものではありませんが、行政指導や処分の基準となるため、必ず目を通しておく必要があります。

確認すべき主なガイドライン概要
医薬品等適正広告基準薬機法の広告規制全般に関する基本的な考え方や具体的な基準について記載
化粧品の効能の範囲化粧品で広告できる56項目の効能効果がリスト形式で確認可能
医療広告ガイドライン医療機関のウェブサイトなどに適用される広告規制について解説している資料

情報は法改正や社会情勢に応じて更新されるため、定期的に最新版を確認することが重要です。

2. 社内体制を整備し責任者を置く

薬機法違反を防ぐには、広告表現をチェックする社内体制の整備が不可欠です。多くの違反は、個人の判断ミスではなく、確認フローが存在しないために生じます。

薬機法に関する知識を特定の担当者任せにするのではなく、組織としてリスク管理をしましょう。おすすめの対策は、次のとおりです。

  • 広告表現に関する社内独自のガイドラインを作成する
  • 広告を公開する前に、法務部門や専門知識を持つ担当者が必ずチェックするフローを設ける
  • 定期的に社内勉強会を開催し、最新の違反事例や法改正の情報を共有する

広告規制は個人技ではなく、組織管理の問題です。責任者を明確にしてチーム全体で薬機法への意識を高め、継続的な法令順守につなげましょう。

3. 表示内容には必ずエビデンスを用意する

広告で何らかの効果や性能を謳う場合は、その内容を裏付ける客観的で科学的な根拠(エビデンス)を必ず手元に用意しておきましょう。エビデンスとしては、学術論文や公的機関のデータ、臨床試験の結果などが該当します。

ただし、エビデンスがあっても、薬機法で認められた効能効果の範囲を超える表現はできません。

例えば、機能性表示食品であれば届出内容に沿った表現が必要です。臨床試験データがあっても、「治る」「改善する」といった医薬品的表現は健康食品では認められません。

エビデンスは、保険ではなく前提条件です。科学的根拠の確認と、表示可能な範囲の見極めのセットが、違反防止につながります。

4. 弁護士や専門家による第三者レビューを導入する

広告リスクを抑えるには、専門家による第三者レビューの導入が有効です。

社内のチェックだけでは、どうしても商品を売りたい視点が強くなり、客観的な判断が難しい場合があります。薬機法は条文だけでなく通知や運用解釈も影響するため、実務経験のある弁護士や薬事コンサルタントの視点が重要です。

新商品発売時や大規模な広告展開前、必ずリーガルチェックを実施する企業は少なくありません。表現の微修正だけで違反リスクを大幅に下げられるケースも多いため、事後対応よりもコストを抑えられるでしょう。

5. 薬機法チェックツールで事前確認を行う

広告の原稿を作成する初期段階で、機械的にNGワードを検出できるチェックツールを活用すると効率的です。

薬機法違反は、断定的表現や医薬品的効能の記載など、特定の語句や言い回しから発生するケースが多く見られます。近年はAIを活用した広告チェックツールが登場しており、NGワードやリスク表現を自動抽出できるようになっています。

例えば、AIによる法令チェック機能を備えたトラスクエタ(TRUSQUETTA)や、薬機法・景品表示法のリスク表現を解析するAD JUDGEなどのツールがあります。

ただし、ツールの判定はあくまで補助的なものです。文脈によっては問題ない表現も検出されたり、逆にツールが見逃す表現もあるため、最終的な判断は専門家が行うようにしましょう。

薬機法以外の注意すべき関連法規3つ

広告規制は薬機法だけで完結しません。薬機法上は問題がなくても、他法令に抵触するケースもあります。本章では、広告担当者が押さえておくべき主要な3つの関連法規を解説します。

景品表示法

薬機法に違反していなくても、景品表示法に抵触する可能性があります。

景品表示法では、主に「優良誤認表示(実際より著しく優良に見せる表示)」と「有利誤認表示(価格や条件を有利に見せる表示)」が問題となります。薬機法が効能効果を規制するのに対し、景品表示法は表示の誤認性そのものを問題にします。

たとえば「業界No.1」「満足度99%」と表示する場合、客観的根拠がなければ優良誤認に該当します。また、「初回無料」と強調しつつ実際は定期購入が条件である場合は、有利誤認と判断される可能性があります。

広告表現は、効能だけでなく見せ方も問われます。薬機法と景品表示法は別の観点から規制しているため、両方の基準での確認が重要です。

健康増進法

健康食品やサプリメントの広告では、健康増進法にも注意が必要です。

健康増進法では、食品の表示において「著しく事実に相違する表示」や「著しく人を誤認させる表示」を禁止しています。薬機法が医薬品的効能の標榜を規制するのに対し、健康増進法は食品分野における誇大な健康効果の表示を取り締まる位置づけです。

「飲むだけで必ず痩せる」「誰でも短期間で血糖値が正常化する」といった断定的表現は、医薬品的効能でなくとも、誇大表示として問題になる可能性があります。

特にダイエットや美容系商品の広告は監視対象になりやすい領域です。食品としての表示規制も同時に確認しましょう。

不正競争防止法

競合製品との比較広告では、不正競争防止法にも注意が必要です。

不正競争防止法は、他社商品との混同を招く表示や、事実と異なる比較によって営業上の利益を侵害する行為を禁止しています。薬機法や景品表示法が消費者保護を目的とするのに対し、不正競争防止法は事業者間の公正な競争を守る法律です。

「他社製品より圧倒的に効果が高い」「○○社製より安全」などと表示する場合、客観的データがなければ虚偽表示として問題となる可能性があります。また、競合商品名を挙げた誤認を招く表現もリスクとなります。

比較広告を行う際は、客観的根拠と表現の適切性を慎重に確認してください。

まとめ:コンプライアンス遵守で信頼される広告を目指そう

本記事で紹介した違反事例から分かるとおり、問題となるのは一部の悪質な事業者だけではありません。健康食品や化粧品、SNS広告など、日常的な広告活動の中にもリスクは潜んでいます。

薬機法の規制は複雑で厳しいものですが、その根底にあるのは「国民の健康と安全を守る」という大切な目的です。

コンプライアンスを遵守した誠実な情報発信を行うことで、消費者からの信頼を獲得しましょう。

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ペーパーアド編集部
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