アンブッシュマーケティングとは?知っておくべき注意点や事例を解説

欧米ではポピュラーな手法であるアンブッシュマーケティング。
一歩間違えると、違法となりかねないことをご存じでしょうか。

「有名企業がアンブッシュマーケティングをおこなっているのは知っているが、違法と合流の境界線がわからない」という方も多いと思います。

そこで今回の記事では、アンブッシュマーケティングについての説明と、アンブッシュマーケティングをおこなう際に知っておきたい法律や規制について解説。

あくまで法律で認められる範囲内でおこなうのが、アンブッシュマーケティングです。
つまり事前に法律や規制について知るだけで、不必要なトラブルを避けることができます。

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アンブッシュマーケティングとは?

アンブッシュマーケティングとは、「イベントの公式スポンサーではない企業が、イベントを連想させるようなプロモーションを実行すること」を言います。

連想させると言っても、ロゴなどイベントが所有する権利を侵害しないでおこなうことが前提です。
権利を侵害しない前提で、工夫を凝らしながらイベントを連想させ、人々の関心を集めるのがアンブッシュマーケティング。

特にオリンピックやワールドカップなど、世界的なイベントの際によく活用されるマーケティング方法です。

アンブッシュマーケティングに関わりのある法律

アンブッシュマーケティングをおこなうにあたり、コンテンツホルダーの権利を侵害してはいけません。
アンブッシュマーケティングにおいて、逆に何が権利侵害に当たらないかを知ることも大切です。

知的財産権として法律で守られている、代表的なものは以下の通りです。

  • 著作物
  • 登録商標
  • パブリシティ権が及ぶ肖像や、氏名
  • 不正競争防止法や、アンブッシュマーケティング規制法で規制されている行為

上記を許可なく引用すると、イベント側の権利を侵害してしまうことになります。

事前に知っておきたい、アンブッシュマーケティングに関わりのある各法律について見ていきましょう。

著作権法

著作権法は、小説やアニメ、美術などの著作者の利益を守るために作られた法律です。
著作権法の保護にあたる著作物とは、思想や感情を創作的に表現したもので、美術や文学、文芸・建築などが該当します。

著作権のある著作物を許可なく無断で利用した場合、著作権侵害となります。

著作権を害さない範囲での利用は認められていますが、引用の場合は必ず事前に確認をしましょう。

商標法

商標法は、商標を使用する人に独占的な使用権を与える法律です。
商標とは、サービスや商品の目印のことを言います。

引用:Toreru商標検索

もし権利を持っていない人が、商標登録されている商標を使い勝手に商品・サービスを販売すると、商標権の侵害となってしまいます。

類似した商標も勝手に利用することはNGであり、法的な制裁も発生するため注意が必要です。

不正競争防止法

事業間の公正な競争と、健全な経済の発展を目的に作られた法律が、不正競争防止法です。

不正競争防止法で禁止とされるのは、以下のようなケースです。

  • 他社のヒット商品と同じ商品名を使い、自社で販売。
  • カルフォルニア産の牛肉を、宮城牛と表記し販売。
  • 特定の品質基準を満たしているかのように、偽装し販売。

以下のように不正競争防止法では、禁止行為が定められています。

引用:経済産業省知的財産製作室「不正競争防止法」(2021年)

禁止行為に対し損害賠償、差止請求、刑事罰が定められており、アンブッシュマーケティングを実行する際には、入念に該当がないか確認してください。

アンブッシュマーケティング規制法

アンブッシュマーケティング規制法は、大規模イベントの際に各国で制定されているものです。

アンブッシュマーケティング規制法が制定された場合は、従う必要があります。

オリンピック広告におけるアンブッシュマーケティングの規制

無事終幕を迎えた、東京2020オリンピック競技大会ですが、アンブッシュマーケティングに向けた対策がおこなわれてきました。

世界的な大会では通常、コンテンツホルダーの権利やスポンサーの利益を守るため、アンブッシュマーケティングへの対策がおこなわれます。

重要なことは知的財産権として法律上保護されるもの、保護されないものをしっかりと把握することです。

東京2020オリンピック競技大会を元に、例をあげていきます。

知的財産として法律上保護されるもの

東京2020オリンピック競技大会で知的財産として定められたものは、代表的なもので以下の通りです。

引用:東京2020オリンピック競技大会に関する知的財産保護·日本代表選手等の肖像使用について 更新版(2021年6月10日付)

日本代表選手団やJOCの知的財産についても、明記されています。

引用:東京2020オリンピック競技大会に関する知的財産保護·日本代表選手等の肖像使用について 更新版(2021年6月10日付)

オリンピックに関わる知的財産を流用した広告やPRは禁止されており、オリンピックのパートナーであるかのような誤解を招く広告・PRも禁止。

個人スポンサーや非営利団体が使用する場合も、表記や商業活動において規制があります。

知的財産として法律上保護されないもの

次に知的財産として定められないものとは、何かを見ていきましょう。

以下は具体例です。

  • 色(ユニフォームカラー)の利用
  • 「東京」や「2020」など単体フレーズの利用
  • 競技種目としてあるスポーツ(サッカーなど)の利用

その他にも、法律やアンブッシュマーケティング規制法にかからないものであれば、利用が可能です。

大会ごとのガイドラインを確認

今回は東京2020オリンピック競技大会を例にあげました。

しかし大会ごとに知的財産や、アンブッシュマーケティングに対する記載は異なるため、大会ごとにガイドラインを確認する必要があります。

ガイドラインを確認し、公式スポンサーのメリットを侵害せず、法律的にも社会的にも責任を持ってマーケティングをおこないましょう。

合わせて、「スポーツイベントのチラシを制作する前に絶対チェックすること」の記事もご覧ください。

アンブッシュマーケティングの事例

アンブッシュマーケティングに成功した事例を紹介します。

紹介する事例はいずれも世界的な有名企業であり、グレーゾーンを鋭く突いてアンブッシュマーケティングに成功しています。

大企業だからこそできる戦略もあるかもしれませんが、アンブッシュマーケティングの攻略法のヒントを得られることは間違いありません。

まずは数々のアンブッシュマーケティングを成功させてきた、NIKEから解説していきます。

NIKE(ナイキ)

引用:WWD 「ナイキ」がパリで女子サッカーW杯のユニホームを披露 著名選手がモデルとして登場

国際的なスポーツ大会のたびに、NIKE(ナイキ)はアンブッシュマーケティングをうまく活用しています。

代表的な例をいくつか記載します。

1984年ロサンゼルス
オリンピック
「I LOVE LA」キャンペーンを展開。
開催都市であるロサンゼルスとのつながりを強調。
1996年アトランタ
オリンピック
マイケル・ジョンソンに金色のスパイクを提供。
本人が金メダルを獲得したこともあり、話題を集める。
2019年サッカー女子
ワールドカップ
開催地域であるパリにちなんで、サプライヤーであるチームユニフォームのPRイベントを、ファッションショー形式で開催。
さらに女性の地位向上や、性別格差の是正についての姿勢を表し、評価を受ける。

上記の他にもNIKE(ナイキ)が仕掛けたアンブッシュマーケティングは数多くあり、大会のたびに大きな話題とブランドイメージアップを成功させました。

NIKE(ナイキ)の事例より、公式スポンサーであるかのような錯覚を起こさせたうえで、より自由度のある活動ができるのがアンブッシュマーケティングの強みであるとわかります。

IKEA(イケア)

引用:The 9 best marketing ambushes at the 2018 World Cup

スウェーデンの家具メーカーであるIKEA(イケア)は、2018年ロシアワールドカップの際にアンブッシュマーケティングを活用。

ロシアワールドカップの開催と合わせて、セパレートできるタイプのソファーを販売しました。
そして違うチームを応援する家族や友人と、一緒に閲覧できるコメントを同時に記載。

知的財産は侵害せずとも、ロシアワールドカップとうまく関連性づけ、アンブッシュマーケティングを成功させました。

 

Volkswagen(フォルクスワーゲン)

引用:https://vimeo.com/253447738

同じく2018年ロシアワールドカップにて、公式スポンサーにもかかわらず、同大会の期間中に自社プロモーションを成功させたのがVolkswagen(フォルクスワーゲン)です。

ワールドカップの大会1ヶ月前には、対戦国の抽選がおこなわれます。
そこでVolkswagen(フォルクスワーゲン)は抽選の結果に合わせて、随時バナーのデザインを変えていきました。

運転席にはロシアのサポーターと思わせる男性が乗っています。
そして対戦相手国のサポーターを思わせる相手が助手席に座り、対戦相手が変わるたび違うサポーターに変わっていったのです。

バナー広告は2日間で4万回のクリックを達成し、550万回のインプレッションを記録しました。

公式スポンサーではなくとも、ワールドカップのタイミングを利用し、ロシアの人々へのプロモーションを見事成功させたのです。

「イベント広告で集客力をアップさせるコツとNGポイント」の記事も、合わせてご覧ください。

トラブルを避けるためにもアンブッシュマーケティングを学ぼう

今回の記事では、アンブッシュマーケティングについて説明しました。

またアンブッシュマーケティングをおこなう際に知っておきたい、4つの法律についても解説。

  1. 著作権法
  2. 商標法
  3. 不正競争防止法
  4. アンブッシュマーケティング規制法

知的財産権として法律上保護されるコンテンツと、保護されないコンテンツの違いを理解しておきましょう。

欧米では成功事例も数多くあるアンブッシュマーケティングですが、著作権などの法律の知識が不足していると、思わぬトラブルや罰則を招く事態に。

トラブルを事前に防ぐためにも、アンブッシュマーケティングを実行有無に関わらず、事前にアンブッシュマーケティングについて学ぶことをおすすめします。

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