違法ではない?有料老人ホームの広告規制について解説

介護施設の広告では、設備や職人の人数などの記載について厳しい規制があるとご存じですか?

介護施設の広告は、入居を考えている本人や本人の家族たちが、入居に対して前向きな気持ちになれる安心材料のひとつです。
事実に反する内容を載せていたり誇大広告であったりすると、安心して入居できません。

本記事では、守らないと信頼度が下がってしまう介護施設の広告規制について詳しく解説します。

介護施設の集客には、信頼度の高さが必要不可欠です。
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介護施設の広告規制について

平成16年4月、公正取引委員会は「有料老人ホームに関する不当な表示」の運用をスタートさせました。

規制の対象は、大きくわけて7項目あります。

  1. 土地または建物
  2. 施設または設備
  3. 居室の利用
  4. 医療機関との協力関係
  5. 介護サービス
  6. 介護職員等の数
  7. 管理費等

出典:有料老人ホームに関する不当な表示

設備やサービスの内容、職員の数など広告に掲載している内容と実際とで相違があると、入居者や入居者の家族はとても困ります。
最悪の場合、訴えられかねません。

有料老人ホームに関する不当な表示は、介護施設の広告が原因でトラブルを未然に回避するためにあるのです。

7項目について、詳しくみていきましょう。

①土地または建物

有料老人ホームの土地または建物については、あいまいな表記をしてはいけません。

表示する際は、入居者に誤解を与えないよう明確に伝える必要があります。
介護施設が所有しているものでない・借地である場合、所有していないことが明確にわかるよう記載しましょう。

悪い例
  1. 有料老人ホームがその土地、または建物を所有していないにもかかわらず、「鉄筋コンクリート造○階建て」のみ表示している
  2. 有料老人ホームがその土地、または建物を所有していないにもかかわらず、有料老人ホームの建物の外観写真のみを表示している
いい例
  1. 事業主体○○、土地所有者△△、建物所有者□□
  2. 土地・建物の権利形態を明記する、賃借の場合は「定期借地権 契約期間○年(平成△年契約)」

入居する前に借地だとわかるのと、入居してから初めて気づくのとでは、やはり気持ちが違います。
土地や建物については事前に知っておきたい人も多いため、記載は明確にしましょう。

②施設または設備

介護施設の入居者が利用する施設または設備について表示する際、以下に該当する場合は注意です。

  1. 有料老人ホームが設置しているものではない施設、設備がある場合
  2. 有料老人ホームの敷地または建物内に設置されていない場合
  3. 利用するごとに費用を支払う必要がある場合

上記に該当する場合は、3つのポイントを明記する必要があります。

  • 施設・設備の設置場所
  • 介護施設からの距離や所要時間
  • 利用料金

例えば「プールが利用できます!」と記載する場合、介護施設が設置しているのか、介護施設の敷地内にあるのか、利用に費用はかかるのかといった内容まで記載しなくてはなりません。

「敷地内にあると思っていたのに、移動しないといけないの?」「無料だと思っていたのにお金がかかるの?」といった相違が生まれないようにするために、しっかりと明記が必要です。

施設または設備に関しては、以下のような正しい表示を参考にしてください。

いい例
  • 温水プールは〇〇市が設置しているもので、入居者の方も自由に利用できます
  • 特別浴室は医療法人○○が経営する△△センターが設置しています
  • 当施設から400メートルの場所にあります
  • 介護施設から徒歩5分の場所にあります
  • 施設または設備が隣接した場所に設置されている場合は、「当施設の敷地に隣接した○○にあります」
  • ○○プールの利用には、1回400円の費用が必要です
  • ○○センターの利用には、別途料金が必要です

ただし、以下のような不特定多数の人が利用する施設または設備は含まれないため注意しましょう。

  • 商業施設
  • 公園
  • 学校
  • 図書館
  • 美術館
  • 博物館
  • 病院
  • 官公署 など

また、特定の用途のために利用する専用の施設または設備を設置・使用していない場合にも、その旨を表示しなければなりません。

  • 機能訓練室は談話室と共用
  • 機能訓練実施時には〇〇室を機能訓練室として使用します など

介護施設の設備の構造または使用について、一部異なるものがある場合も明記が必要です。

  • 南向き
  • バリアフリー構造
  • プライバシー確保 など

「全室南向きだと思っていた」「機能訓練室と談話室は別だと思っていた」といった相違が起きないよう、詳細情報を正しく表示しましょう。

  • 南向きの部屋は20部屋中14部屋
  • 南向き居室4室
  • 居室Aタイプ(シャワーつき) 21室中12室
  • 居室Bタイプにはシャワーが設置されていません など

③居室の利用

介護施設の入居者が初めに入居した居室から住み替える際は、4つの点に注意して明記しなければなりません。

  1. 初めに入居した居室より狭くなった場合
  2. 初めに入居した居室を利用に関する権利が変更または消滅した場合
  3. 別の居室に変更すると追加費用が発生する場合
  4. 居室の構造や間取り変更、初めに入居した居室より狭くなったにもかかわらず料金の調整がない場合

また、終身にわたって入居者が居住、または介護サービスの提供を希望している場合でも、入居者の状態によっては退去、または提携施設への住み替えを求める旨を明記する必要があります。

以下のような表記には注意しましょう。

  • 終身介護
  • 最後までお世話します
  • 生涯介護
  • 入居一時金について追加の費用はいりません など

終身介護かどうかで入居を決める方もいるため、住み替えの可能性が少しである場合は記載が必要です。
住み替えを求めるかもしれない入居者の条件について、具体的な内容を定めておきましょう。

④医療機関との協力関係

医療機関との協力関係にある場合、より具体的な協力内容を記載しなければなりません。

  • 医療機関の名称
  • 診療科目の具体的な内容
  • 医療費の負担がある場合
    ※健康保険法等にもとづく医療または療養の給付を受ける際の一部負担金を除く費用

健康保険法等にもとづく医療、または療養の給付を受ける際の一部負担金を除いて、入居者が新たに負担する費用がある場合は明記する必要があります。

広告に「●●病院が近くにあります!」などの表記があり、よく通っている病院であれば入居をしたいと考えるも多くいます。
協力関係の有無はしっかり明記しましょう。

⑤介護サービス

介護施設が介護サービスを提供しない場合は、外部の事業者による訪問介護サービスを利用する必要があるかどうか明記しなければなりません。

提供する介護保険法の規定にもとづいて、保険給付の対象とならない介護サービス内容・費用をより具体的に表示します。

  • 介護一時金15万円
  • 月額払介護費15万円 など

また、基準よりも介護職員等の人数が多く、サービスの手厚さを理由に追加費用を徴収する場合は、以下の5点を記載しましょう。

  1. 要介護者等の人数に応じた介護職員等の数
  2. 要介護者など介護サービスにかかる費用
  3. 徴収方法
  4. 合理的な積算根拠にもとづいている根拠を示す内容
  5. 具体的なサービス内容

追加費用がある場合、払う理由がわからないと不安になります。

「このようなサービス内容だから職員がこれだけ必要で、お金もかかるんだな」と、入居者が納得できるよう記載しなくてはいけません。

⑥介護職員などの数

介護施設の職員の人数は、具体的な数値を明記しなければなりません。
例を入れて紹介します。

  • 週160時間換算で20人(うち要介護者等対応は8人)
  • 20人(うち要介護者等対応8人、週160時間換算)など

特に夜間における最少の介護職員の数には注意が必要です。

  • 夜間(22時~翌7時)は最少介護・看護職員数5人(介護職員3人、看護職員2人)
  • 夜間最少時の介護職員数は5人、看護職員数は2人(夜間は22時~翌7時まで)など

「スタッフは充実しています!」などの書き方だと、どれぐらいの人が診てくれるのかわかりません。
具体的な数値があると、より入居者は安心します。

また、資格を有する介護職員に関しては、常勤または非常勤がわかるように表示します。

  • 介護福祉士5人(常勤職員2人、非常勤職員3人)
  • 常勤の介護福祉士2人、非常勤の介護福祉士3人

常勤か非常勤かの記載がないと、入居検討者は「スタッフ全員が常にいてくれているんだ」と勘違いしてしまいます。
スタッフの中には毎日同じ介護施設で働く人も入れば、他の施設と掛け持ちしている人もいるため、常勤か非常勤かわかるようにしておきましょう。

⑦管理費など

介護施設が入居者から支払いを受ける費用について、管理費の内訳を記載する必要があります。

「管理費」という名称からは通常含まれているとは思わない費用が含まれているのであれば、記載しなくてはいけません。

  • 管理費の使途は、事務・管理部門の人件費です
  • 管理費は自立者に対する生活支援サービス提供における人件費および共用施設の維持管理費です

また費用の内訳として記載した費目どおりに使用していない場合、不当表示に該当します。

介護施設における広告で注意すべきポイント

介護施設の広告を出す際は「有料老人ホームの広告等に関する表示ガイドライン」にのっとって出さなくてはなりません。

有料老人ホームの広告等に関する表示ガイドラインは、社団法人全国有料老人ホーム協会が定めたものです。
平成16年8月から運用がスタートしました。

介護施設の広告を出す際、注意が必要となる以下3点について解説します。

  1. 対象となる広告
  2. 特に注意すべき点
  3. 使用してはいけない用語

出典:(社)全国有料老人ホーム協会の定めるガイドライン

対象となる広告は?

有料老人ホームの広告等に関する表示ガイドラインの対象となる広告は、5つあります。

  1. チラシ・パンフレット・説明書面・ダイレクトメール・FAX・口頭や電話による広告
  2. ポスター・車内吊り広告
  3. 新聞紙・雑誌・放送・映写または電光による広告
  4. インターネット、パソコン通信等による広告
  5. 重要事項説明書や介護サービス等一覧表 など

契約関係書類であっても、契約の前段階で顧客を得る目的で消費者に提示する書類は広告の対象となります。

ただし、以下の場合は対象外です。

  • 新聞案内や雑報、看板において、事業主体名や有料老人ホーム名等のみを記載する場合
  • 具体的な事業内容に触れない表示

ガイドラインの対象となる広告の表示には十分注意しましょう。

対象となる広告の中には、チラシや新聞など紙媒体もあります。
もし利用するのであれば「紙媒体の広告で介護サービスの集客率をアップする方法4選」もぜひご覧ください。

特に注意すべき点

公正取引委員会が定める「有料老人ホームに関する不当な表示」にはない注意点を3つ紹介します。

医療に関連する表示有料老人ホームは医療機関ではないため、「看護施設」「医療施設」など、医療機関と誤認される恐れのある表示をおこなってはいけません
写真などの表示入居者または職員の個人データや写真等を表示する場合、個人情報保護法や協会が定める個人情報保護ガイドラインに従って、個人情報の保護に考慮する必要があります
介護サービスの提供場所に係る表示一般浴槽が設置されているだけにもかかわらず、「介護浴室」「特別浴室」など要介護者のための特別な設備が設置されているかのように表示をしてはいけません

有料老人ホームに関する不当な表示に関しては、介護施設である有料老人ホームにおいての景品表示法第5条第3号の規定にもとづく告示があります。

使用してはいけない用語

事実に反していたり、客観的に証明できなかったりする場合は、広告に表示してはいけません。

以下のような表現には注意しましょう。

業界における最上級その他の序列を直接に意味する用語
  • 最高
  • 最高級
  • 一級 など
唯一性を直接に意味する用語
  • 日本一
  • 日本初
  • 業界一
  • 当社だけ
  • 他に類をみない など
完全性を直接または間接に意味する用語
  • 完全
  • 完璧
  • 絶対
  • 万全 など
具体的な数値を明示せずに使用する用語
  • 多数
  • 多くの
  • 十分な など
一定の基準により有料老人ホームが選別されたことを意味する用語
  • 特選
  • 厳選 など
価格が著しく安い印象を与える用語
  • 格安
  • 破格 など
他者よりも利益を得られることを意味する用語
  • 最優先
  • 優先的に など

介護施設の広告に限ったことではありませんが、実際以上にメリットを強調するような広告は誇大広告といわれ、法律で禁止されています。

上記で紹介した表現を使用する際は、入居者に誤解を与えないよう根拠を示しましょう。

また、用語と同じように気をつけなければならないのがデザインです。
ぜひ「老人ホームのチラシをデザインする際に大切な3つのこと」もあわせて読んでみてください。

実例から学ぶ介護施設の広告NG事例

介護施設の広告では、入居者が勘違いや思い違いをするような表現をしてはいけません。

4つのNG事例を取りあげます。
正しい広告表示を学びましょう。

  1. サービス内容に関する表示
  2. 施設・設備内容に関する表示
  3. 利用料金・入居費用に関する表示
  4. 医療機関との協力内容に関する表示

出典:公正取引委員会

サービス内容に関する表示

サービス内容に関するNG事例は、以下の通りです。

表示内容実態
看護職員が常駐している午後6時から翌日午前9時までの間は看護職員を配置していなかった
居室に設置されているテレビ電話で24時間医療機関と健康相談できるいずれの居室にもあらかじめテレビ電話は設置されておらず、入居者はテレビ電話による健康相談はできない
最後までお世話いたします終身介護はやっていない

看護職員についての常駐という表現は、職員が介護施設内に24時間365日継続して職務に従事していることを意味します。

「最後まで」という表記があると、一生を終えるまでずっと診てくれると捉えかねません。

入居者に誤解を与えるような表現、事実とは異なる内容の表示は避けましょう。

施設・設備内容に関する表示

施設・設備内容に関するNG事例は、以下の通りです。

表示内容実態
医務室が設置されている医務室は設置されていない
全居室にテレビ電話が設置されている設置している居室が限られている

「健康管理室」や「健康相談室」といった設備を、「医務室」や「診療室」と表示してはいけません。
健康について相談するのか診療を受けるのかは、用途が異なります。

居室のテレビ電話の設置も一部なのであれば、一部である旨を記載しなくてはいけません。

事実に反する表示をしないよう注意しましょう。

利用料金・入居費用に関する表示

利用料金・入居費用に関するNG事例は、以下の通りです。

表示内容実態
月額基本料金は3LDKの居室を1名で利用した料金である居室を3名で利用した場合の、1名当たりの月額料金であった
入退去時における居室の整備等の費用に充当するものとして入居者が入居時に支払う費用は、月額利用料の1カ月相当分である新設された居室に入居する場合は、月額利用料の2カ月相当分であった

以下のような費用に関する表示は誤解を与えやすいため、注意しましょう。

  • 入居一時金
  • 介護一時金
  • 協力金
  • 管理費
  • 入会金

特にお金に関する内容は入居者ともめやすいです。
細かく記載がないと入居者も入居者の家族も不信感を抱きますし、後から事実が判明すると、もめる原因になります。

金額はもちろん、費用の名称や詳細については正確に表示しましょう。

医療機関との協力内容に関する表示

医療機関との協力内容に関するNG事例は、以下の通りです。

表示内容実態
協力医療機関の医師が訪問診療を実施する訪問診療を実施する協力関係はなかった

協力医療機関について表示する場合は、以下の項目を表示する必要があります。

  • 診療科目
  • 協力契約書にもとづく具体的な協力科目
  • 協力内容
  • 健康保険法等にもとづき、医療費の自己負担分以外に入居者が負担する費用

入居検討者は、どこの病院と協力関係にあるのかという部分もみています。
さらに、協力関係にある病院は何科があるのか、協力内容は何かなども検討の材料としているため、明確に記載しましょう。

NG表記について理解ができたら、次は「老人ホームの集客力を高める広告を制作するコツ」を参考にしながら、広告を作ってみてください。

介護施設の広告規制をしっかり理解しよう!

介護施設の広告規制について解説しました。

以下の2つの大きなルールに注意しましょう。

  1. 有料老人ホームに関する不当な表示
  2. 有料老人ホームの広告等に関する表示ガイドライン

有料老人ホームに関する不当な表示は公正取引委員会、有料老人ホームの広告等に関する表示ガイドラインは社団法人全国有料老人ホーム協会が定めています。

どちらも介護施設の広告における虚偽や誇大広告によるトラブルを回避するために必要なルールです。

2つのルールを守ることは入居検討者の安心につながり、ひいては集客にもつながります。
入居検討者が不信感を抱いたり勘違いをしたりせず、安心して入居できるような広告の作製により介護施設の集客は成功に近づくでしょう。

介護施設の広告を出稿する前に、規制内容をチェックすることが重要です。

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